今回、法政大学のみなさんが、調査のために阿蘇へ来てくれました。
以下は、その時の「大工小屋 甲斐」での木工体験をもとに、5名の学生さん達が作成してれた記事です。
こんにちは!法政大学の学生です。
観光・まちづくりを学ぶため、阿蘇にやってきた私たち。
しかしある日、台風の直撃によって交通機関がストップし、予定していた調査ができなくなってしまいました。
途方にくれていたのですが、ありがたいことに「草原ライド」のガイドさんのご紹介で、木工作家:甲斐信夫さんの大工小屋で木工体験をさせていただけることになりました!
本記事では、私たちが体験した箸・スプーンづくりや素敵な名刺入れ、そして甲斐さんの熱い思いをご紹介します!
草原ライド体験の記事はこちらです。
関連記事:大学生の私たちが体験した、魅力的で忘れられない「草原ライド」
甲斐信夫さんについて
甲斐信夫<かいのぶお>さん(写真右)は、阿蘇在住の木工作家さんです。
阿蘇でとれた木材、とくに本来は山に放棄され「廃材」となるはずだったものを活用し、素敵な作品を生み出されています。
甲斐さんの同級生には、阿蘇で長年林業をされているベテランの方がおり、その方から廃材を譲り受けているそうです。
私たちは草原ライドにて、「竹とんぼ」・「木製の名刺入れ」といった作品を見せていただきました。
作品を見て、「すごい。ぜひ欲しい!」という私たちに、ガイドさんは甲斐さんを紹介してくださいました。
甲斐さんも快く応じてくださり、お会いすることができました。
箸・スプーン作り体験
上述の通り、私たちは甲斐さんの大工小屋にて、箸・スプーン作りを体験させていただくことに。
工房には、大きさ・カタチの様々な木材、多様な作業道具が並べられています。
長方形状の木材を、粗めのやすりを使って削っていきます。
角を均等に削っていくのが案外難しいです。
やすりを使ったことがほとんどない私たちでしたが、甲斐さんはうまく削れるコツを丁寧に教えてくださいました。
形が整ったら、滑らかなやすりや専用の機械を使って、表面を磨いていきます。
自分の名前など、箸やスプーンに文字を入れることもできます。
完成後には、みんなで記念撮影。台風でなかなか外出ができない中、貴重な体験をさせていただきました。
甲斐さんの作品「名刺入れ」
↑阿蘇の木材を使ってできた名刺入れ。表面はなめらかでツヤがあり、ほんのり木の香りが
します。木の種類によって色合いや模様・香りが違うため、世界に1つだけの名刺入れです。
「フタがないので逆さにしたら中身が落ちてしまうのでは?」と思われるかもしれませんが、なんと、中身が1枚だけでも落ちることはありません。
どうやら甲斐さんの技術で中に特殊な仕掛けがあるようです。
草原ライドのガイドさん曰く、「甲斐さんの企業秘密(笑)」とのことでした。
阿蘇に来た思い出がほしい、そして社会人になってから使いたいと男子3名が購入。
長年使っていると、手の脂がしみ込んで年季の入った色合いになるそうです。
そうなるまで、私たちも大切に使い続けたいです。
甲斐さんからの「お土産」
木工体験をさせていただいた次の日に、なんと甲斐さんがお土産を持って会いに来てくれました!
お土産は、草で編んだバッタの置物でした!
実際に近くの草を使って、編んでいる様子も見せてもらいました。
いとも簡単に編んでいましたが、長年ものづくりに関わってきた経験が、その手捌きに詰め込まれているように感じました。
お土産の置物をいただいただけでもありがたいのに、甲斐さん自作の水鉄砲も持って来てくれました。
使っている素材自体は竹と布とビー玉のみで、とてもシンプルなつくりになっていますが、飛距離はかなりのものでした。
私たちも手に取り、盛り上がってバケツの水が空になるまで遊んでしまいました。
甲斐さんの「想い」
木工体験や水鉄砲で遊んでいる合間に、甲斐さんのお話を伺うことができました。
特に印象に残っていることを二つ挙げたいと思います。
1つ目は、「なにも特別なことはしていない」ということです。甲斐さんのものづくりのル ーツは、昔流行っていた遊びや生活の知恵であり、それを応用させているだけだとおっしゃっていました。
2つ目は、「資源を有効活用している」ということです。
甲斐さんの工房で使われている木材は、阿蘇の林業の中で生じた“価値があるのに放置されている資源”や阿蘇神社や国造神社など、由緒ある神社の改修工事の際に生じた廃材がほとんどです。
甲斐さんは阿蘇の営みの中で生まれた資源を管理・活用して、様々なものづくりに繋げています。
そんな甲斐さんに、阿蘇市が「持続可能な観光地」に選出されたことを受けて、私たちが調査にきたことをお話ししました。
すると甲斐さんは私たちに、近年注目されている「SDGs」や「持続可能な開発」という考え方ついて、留意する点があるのではないかと投げかけてくれました。
どこか、「古いものから新しいものへ一新する」というようなニュアンスを含む概念は、甲斐さんの「昔の知恵を用いて地域で生じた資源を活用する」という考え方とは、少し違っていると感じます。
「昔の人の暮らしの方がよっぽど持続可能なんじゃないか」という甲斐さんのセリフは、ものづくりに触れた私たちにとって、とても説得力を帯びるものでした。
甲斐さんとの出会いは、「まちづくり」を学ぶ私たちにとって、考え方を改める機会になったと感じています。
「温故知新」という言葉に代表されるように、昔の生活や技術にも目を向けて、その在り方も踏まえて「まちづくり」を模索するべきではないかと考えるようになりました。
これまでの出来事を振り返ると、改めて甲斐さんと出会って色々なことに気づけたなと感じています。
甲斐さんと居ると、目に映る草木や木の実などすべてが、ものづくりに活かせるように見えて、童心に帰るだけでなく、自然をより身近に感じました。
これらを含めて貴重な体験をさせてもらえたと思っています。
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法政大学のみなさん、「大工小屋 甲斐」の素晴らしい魅力が伝わる記事を、ありがとうございました。